デカルトの密室
この本は、厚さが4cmもあります。この様な分厚い本が本屋の店頭で平積みにされているのを良く見かけますが、たとえタイトルに興味をもって手にとったとしても、自分で買うことはありません。「どうせ読み切れないだろう。めんどくさいし、第一私は忙しい」。
しかし、新潮社の社員の方から「nakoさんに是非読んで欲しい」と、本を頂いたので、心を決めて読み始めました。
作品の印象を短く言うと、押井守の映画「イノセンス」と似ている近未来世界観にのった物語、という感じです。ロボット、人工知能、そして人間そのものの知能、と言ったものがテーマ。というか、押井守から相当強い影響を受けていて「イノセンスを瀬名さんなりに書き直している作品」…というのは言い過ぎでしょうか。もちろん、小説的な調和を表現しています。科学・学術的な視点を織り交ぜていて、「認知科学」的な知識があるほうが良いかもしれません。
で、タイトルの言葉「デカルトの密室」とはなにか?
デカルトの言った「我思う、故に我在り」の「我(私)」は、生まれて死んでいくまで自分という殻から出られない。(マンガみたいに離脱したり、誰かと入れ替わったりすることはない。誰かと意識を共有することもない)
「密室」って言われちゃうと、「中はどうなっているのか?」知りたくなり、そして「抜け出さなきゃ」っていう気になる。この辺が、作者のコピーの力ですね。
で、この密室から抜け出す方法として書かれているものは、私が予想していた、これまで良くある路線(梵我一如系)とは違い、少しオリジナルなものでした。
わかりやすさとわかりにくさの中間の、良いバランスの作品だと思います。読んでいる間もしっかり引っ張ってくれるし、読後感としても「読んで良かった」と思える作品です。
---
で、この本のテーマは「知能とは何か?」ということらしいですが…、私の飲み会での言動から「テーマ」「量」「文章レベル」などを考慮して、私にこの本を薦めてくださった(というか頂いた)新潮社の方に、知性を感じております。そして、感謝いたします。
« ニュースクリップ集:08/29-09/04 | トップページ | つくばエクスプレスでGo! »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。



あれ? 書庫のオブジェになるとばかり思っていたのですが、いつのまにか読み終わったのですね(^^)
投稿: kentaro | 2005.09.08 00:17
私もそうおもっていたんですけどね(^-^;。結構読める内容でした。
投稿: nako | 2005.09.08 15:02