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2007.05.22

銀座の珈琲の物語

 午後3時、銀座。仕事の都合で、1時間ほど時間が空いてしまいました。

 本を読もうと、銀座に店を構えて30余年の、モダンな喫茶店に入りました。カウンターが6席で、テーブルが6つ。その中程のテーブルは、窓際ではありますが、入り口から見ると柱に隠れていて、すこし奥まった印象がありました。

 私が店に入ったとき、そのテーブルに座っていたのは、二人のおじいさんと一人のおばあさんでした。テーブルには、「聖杯」の様な金のカップが3つ並んでいました。どうやらダッチコーヒー(水出し珈琲)を飲んでいるようだったので、私も同じダッチコーヒーを注文しました。

 本を読みはじめたのですが、いまいち頭に入っていきません。

 「…結局私達、終戦で救われたのよね」と横のお婆さんが言いました。「本当に有難いことよ」。何の会話なんだろう、と気になりましたが、その言葉を残して、その3人は席を立っていきました。

 しばらくして私の前にも金のカップが運ばれてきたとき、先ほどのテーブル席に、大柄な50歳位の男性が一人座りました。迫力がある風体で、ヤクザではないが、カタギではない、という感じです。その男性の後ろに30歳~40歳くらいの男二人が付いてきたのですが、二人とも席に座りません。「おまえら、いいよ」という言葉をかけられると、店の外にでていき、驚くべき事に立って待っているのでした。

 彼はカプチーノを注文したあと、店内で辺りに構わず携帯で電話しまくっています。私は気になって、またもや読書が進みません。何か用があると、外の若い衆を手で呼びます。「あの子のやっている店の名前、なんだっけ?」と聞いてみたり「ちょっとこれ、FAXして」と店のFAXを借りたり、果ては「今、何月だっけ?」「五月です」「そうか」。

 コーヒー代はツケなのでしょうか、金は払わず「まだいいよな」と店長に断って、彼はBMWの7シリーズに乗って帰って行きました。

 その次に来たのは、クラブに出勤前のママさん二人。彼女たちはカウンター席に座り、店長と雑談の後、なぜか改まって「アイスウィンナーコーヒー二つ、おねがいします」と注文しました。

 「あのパーティ会場、相当広かったわよねー」などと、景気の良い会話のオンパレード。私は、本を読むふりをしつつ、チラ見して、何度か目が合いました。

 …でも、こう、あまり言いたくないですが、お二人はきゃぴきゃぴした華やいだ会話をされていて、大変高価そうなお着物を着ておられて、髪の毛もバッチリセットしておられるのですが、やはり、外が明るいうちに見てはいけないのかな、と思いました。

 そのママさんたちも出勤していき、次にその席に座ったのは、またもや、二人のおじいさんと一人のおばあさん。

 銀座はこんな感じなんだろうな、と思いながら、ダッチコーヒーを飲み干して、私も席を立ちました。本のしおりは、元の位置に挟みました。

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コメント

「銀座の・・物語」爽やかなもじり。
さらりと世の中の風景が見えてきて、意味なくも面白い。
3人目のおじいさんとして、私もその場所に居たかった。
ブログサーフインの甲斐あって、ブログそのもののエレメントを拝見させていただきました。

小高さま

ご丁寧なコメントを頂き、有り難うございます。面白いと言って頂き、恐縮ながらも嬉しいです!

ありがとうございました!

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