編集進化論 ーeditするのは誰か
フィルムアート社
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この本は、「出版業界が変化する中、"編集者"はそのスキルを活かしながら、今後どのように仕事の幅を広げていくか」という視点で書かれている本です。
まず「編集とはなにか?」という問いに、
・コンテンツを集め、選び、加筆訂正して、並び替え、パッケージする。
という基本的な説明に加えて
・異なるコンテンツを「と」で結びつけることによる新たな価値を生み出す。
・編集とは「影の仕事」(数値化しづらい部分を請け負っている)。
・編集とは(世界の違う人に情報を伝える)「翻訳」の様な仕事。
という、やや別の角度からとらえた説明もなされています。そこからさらに、編集から
・ディレクション
・キュレーション
・コミュニケーションデザイン
へとつながっていくパースペクティブを示しています。
本書は、それを直線的に示すのではなく、編集に携わるさまざまな方の文章を「編集」してーその手法は本文にもある「野球と言うよりサッカーのような」ダイナミックさによってー印象的に編み込まれ、綴られています。
私がこの本を読もうと思ったきっかけは、印刷屋の隣の仕事としての「編集」をよりいっそう理解したかったから、です。その意味で、ただの「編集」の解説以上に、そのパースペクティブを把握できたのは、とても良かったことです。
さらに、アサダワタルさんの書かれた内容に、「異分野コミュニティを交通させる」、そして「公/私を編む」と題された内容があります。編集という手法で、直接的にさまざまな「活動」たちを「編集」して、人々を巻き込みながら新しい価値を作っていく様が書かれています。
このような考え方は、いわゆる「コミュニケーションデザイン」をさらに多元的に展開できる可能性を示している様に思います。あるいは、たとえば「印刷」や「制作」「編集」といったワークフローの固定的な要素を、プロジェクトの目的ごとにさらにダイナミックに再構成していく可能性をも感じられました。
いろいろな考えが浮かび、良い読書体験ができました。まだ想起できることがあるように思いますが、とりあえず、読了後の感想ということで。
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